034.同一性保持権(2)〔毎日がすぷらった事件〕

著作権

概要

  • 2001年(平成13年)8月30日:大阪地裁
  • シナリオ文章の改変は、どこからが同一性保持権侵害にあたるのか?
  • X(原告):ゲームシナリオライター
    • Aが発売する「ノベルス ゲームセンターあらしR」に組み込むゲームシナリオの製作委託契約を締結→「毎日がすぷらった」(本件シナリオ)を制作
  • Y(被告):Aの下請け
    • 本件シナリオを使用してサウンドノベルゲーム「毎日がすぷらった」(本件ソフト)を製作
  • Yは、本件ソフトの製作にあたり、Xの了承を得ず429箇所の改変を加えた
    • 製品パッケージ等には「毎日がスプラッタ」と、ゲーム画面では「まいにちがすぷらった!」と表記
  • Xは、Yが本件シナリオを無断で改変して、その題号(タイトル)を変更したことにより、Xの著作者人格権(同一性保持)を侵害し、精神的損害を与えたとして慰謝料300万円を請求

判旨

  • 請求一部認容・一部棄却
  • 一部の改変にはシナリオの表現に著しい増減がある
  • ひらがな表記を漢字に変更、アラビア数字を漢数字に変更、疑問符・感嘆符の追加・改行位置の変更など
  • いずれも、サウンドノベルという性質上、シナリオの占める割合が大きく、著作物の改変にあたる
  • 題号の変更も同様

受領したシナリオ原稿を、編集上の都合であっても、勝手に変更してはダメ!

ウェブディレクターとして注目したいところは「形式的で些細な表記方法に関する改変」(本誌解説)です。「429箇所の改変」とありますが、ひらがな→漢字、アラビア数字→漢字、改行位置など、自分が仕事で原稿テキストを使うときに気になったところは手直しするだろ的な部分も「同一性保持権侵害」とされたところです。

えー!表記をそろえただけでもダメなの!?……とは言え本件シナリオは、サウンドノベルゲームであり、「読ませる」ものです。その一字一句にわたり、著作者が著作者人格をかけて突き詰めた表現であります(ひらがなにするか、漢数字にするのか……など)。そういった背景も鑑みて、著作者の意思なく改変ができないという判例です。

やむを得ない改変

もちろん著作権法にも適用除外事由があり、「やむを得ないと認められる改変」があります。本件被告Yもゲーム業界の慣例としてこの点を主張していたようですが、サウンドノベルのシナリオの役割の大きさから「やむを得ない」は否定されたようです。

しかし、語尾や表記揺れや改行位置は直したくなるよなー。その都度、著者に確認しろということなんだろうけど。ウェブサイトだとすぐに直したくなるよなー。著者に確認するより少ない工数で直せちゃうんだもんなー。著者との信頼関係という別の要素もあると思います。

「毎日がすぷらった」って?

ところで「ゲームセンターあらし」「すぷらった」って??この謎のゲームは何なんでしょうか?

「1999年5月4日にヴィジットから発売されたプレイステーション用サウンドノベル」とのこと。どうやら「ゲームセンターあらし」のタイトルがありますが、複数の別個のシナリオのゲームで構成され、それぞれをクリアして一定ポイント獲得して、はじめて「ゲームセンターあらしR」をプレイできるという内容のようです。

また、どの程度シナリオが改変されているのかも判例全文にありました。小説を勝手に手直しされたという解釈をすれば、確かにアウトだと感じます。

【原告の主張】
(1) 本件改変により、原告の著作物たる本件シナリオの創作性は、次のとおり、大幅に損なわれている。
ア 主な舞台となる主人公の住居は、本件シナリオでは、学生下宿のようなアパートの一室であったが、本件ソフトでは、おじ夫婦の住む高級マンションに変えられている。その結果、室内の描写が大幅に改変される一方、原告の書いた元のアパートの描写が残っている部分もあり、部屋の描写が全体として著しく整合性を欠くものとなっている。
イ 原告はストーリーの分岐点を13か所用意していたが、被告は新たな分岐を作ってバッド・エンドを1つ増やし、同バッド・エンドへ至る部分を書き下ろしている。
ウ 分岐12Aの後の文章を100行以上にわたって大幅削除している。
エ 主人公の台詞の言い回しを変えている箇所がある。
オ 台詞の発言者を変更している箇所がある。
カ 主人公がバイクを見る表現が削除されている箇所があり、そのため後とのつながりが不自然になっている。
キ あえて平仮名表記にしてあるものを漢字に直し、漢字にしてあるものを平仮名に直した箇所がある。
ク 疑問符(?)や感嘆符(!)等、原告の意図から外れた強調をしている箇所、地の文中に入れた台詞にわざわざ「」を挿入した箇所がある。
ケ 改行の位置を変更した箇所、読点を「…」に変更した箇所、当初なかった説明的な文章を挿入している箇所がある。
また、本件シナリオのタイトル「毎日がすぷらった」が前記第2、1、(3)のとおり改変されており、これは著作権法20条1項所定の「題号」の意に反する改変に当たる。

日本ユニ著作権センター/判例全文・2001/08/30
https://www.translan.com/jucc/precedent-2001-08-30.html

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