概要
- 2015年(平成27年)5月25日:知財高裁判決
- 設計図(建物)の著作物性についての判断
- マンション建て替えるY(被告・複数)
- 最初に設計をした業者X
- Xの設計書を受領後に、YがXではない業者に依頼
- 新しい業者でマンションは新築工事
- 「日神パレステージ初台オペラ通り」
- Xの設計図に似た設計図であったため、設計図面の著作権(複製権、翻案権)の侵害として損害賠償請求
- 原審(東京地裁)は、設計図そのものの工夫がないと著作物性は認められない(「設計対象非考慮説」)と請求棄却
- X控訴
- 判決:控訴棄却
- 設計図+建築される予定の建物の著作物性も判断基準となる(「設計対象考慮説」)
- 本設計図に著作物性はある
- しかし、複製・翻案となるとデッドコピーのように丸写しでない限りは、保護対象とならないとして棄却
- Xは上告したが棄却・不受理
(比較)工業製品における設計図
前記事でも設計図の著作物性が議論になっている。
前回記事では大量生産される工業製品における設計図には著作物性がないと判断されている。
しかし、今回は一級建築士であるXの専門的知識と技術により設計図には個性が反映されていて、創作性が認められた(著作権あり)。ただし、本件はXの元設計図のデッドコピー(丸写し)ではないとして棄却されている。
(比較)建築物の複製
今回のテーマは設計図の複製だけど「建築物の複製」ってなに??
- 建築物の複製は著作権法に明記されている
- 建築物自体に著作物性がある場合に、その設計図をもとに同じ建築物を作ることを言う
- あまりケースを思いつかないが…有名デザイナーが設計・建築した建物と同じものを設計図を見ながら別の場所につくるような場合か
(参考)「日神パレステージ初台オペラ通り」ってどこ?
現存するマンションのようです。
東京オペラシティ至近。最上階「9階60㎡2LDK 22万円~」で賃貸が出ていたこともある都心のマンションです。
ウェブディレクターの視点
前記事で、工業製品の設計図に著作権はないということから、ウェブ制作の過程で作成する資料にも著作権はないのか…と思っていましたが、設計図+設計により作られる予定のもの(「設計対象考慮説」を採用)という解釈もできそうです。
例えばウェブサイトのワイヤーフレームや画面設計図はどうだろうか。受注前にワイヤーフレームを渡したら、それをもとに別会社でウェブサイトを制作されたなんてことはありそうだ。ただ、ワイヤーフレームが丸パクリされたということを判断するのが困難。制作の過程で調整が入りそうだし。
この辺は法的に議論が分かれているようで。白黒ハッキリさせるのが法律なのに、その解釈に幅があるというのは、法学とはそう言うものなのだろうか。
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