024.法人等の発意〔北見工業大学事件:控訴審〕

著作権

概要

  • 2010年(平成22年)8月4日:知財高裁
  • 著作物の職務著作になる条件「法人等の発意」とは?
  • X(原告):研究者(Y大学勤務)
    • 平成17年3月17日(平成16年度)に懲戒処分(停職)
  • Y(被告):北見工業大学
    • 平成5年度~平成17年度の環境調査を北見市等と共同研究契約
  • Xは平成5年度~15年度は共同研究に参加
    • 上記の懲戒処分により平成16年度以降の研究には不参加
  • Xの主張
    • 「平成15年度報告書」は自身に著作権がある
    • Yによる平成16年度、平成17年度の報告書は複製権等の侵害
  • 原判決(東京地裁):平成15年度報告書は職務著作として棄却

判旨

  • 知財高裁:控訴棄却
    • 平成15年度報告書は原判決の通り職務著作である
    • Yと北見市等の契約において研究したのだから、Yの指揮監督による職務著作である

「職務著作」で当たり前……ではなかった

単純に考えると「職務著作」だろうと思いますが、本書の後半を読むと少し考えが変わります。
長いので引用はしませんが、論旨としては、

大学の研究者が作成した研究論文や授業用の資料、レジュメ、講義そのものなど。これら著作物は全て職務著作であり大学の著作物になるのか?

というものです。たしかに、それは現実とは違うな。大学の先生の書籍は先生のものだし、発表した研究論文も先生のものだろう。先生が勤務する大学を変えた場合(転職?)、前の大学の講義内容は使えないということもないだろう。

なのでこの判例のテーマは著作権法で職務著作の条件となる「法人等の発意」とは何か?というものです。単に大学が研究者に資金や環境を用意したのでは「発意」にならないという判断です。

ただこの判例のケースでは北見市等との契約にもとづく共同研究ということから、大学が発意して原告の教授に指示を出したので職務著作に該当したという解釈のようです。

なお特許法による「発明」も似たような争いになりますが、こちらは就業規則等で事前に帰属を定めて争いを回避します。しかし著作権において著作者人格権は移転できないため、職務著作という規程が重要になってくるのです。

ウェブディレクターの視点

業務上で作成したウェブサイトだけでなく、企画書や資料、はたまたキャッチコピーなども含めて、すべて会社の著作物になるというのは納得しています。そして大学の研究者はたしかに違う感じもする。自分の研究論文はどこの大学で在籍中に執筆していようが自分のものになるだろう。

なにかWeb制作・Web開発の分野でも、このような考え方で、会社ではなく自分自身に権利が残るようにならないだろうか……しがないサラリーマンの発想です。

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