概要
- 2000年(平成12年)2月29日:東京地裁
- 学校内で配付した卒業文集は公表した著作物になる?
- X(原告):Jリーグ選手(中田英寿)
- Y1(被告):出版社
- Y2:社長・Y1が出版した本件書籍の著者・発行者
- 本件書籍
- Xの半生やエピソードや写真、中学時代に創作した詩を掲載した出版物
- XはYから取材や通知もなく、使用の許諾も与えていない
- Xは、本件書籍がXのパブリシティ権、プライバシー権、著作者人格権(公表権)、著作権(複製権)の侵害として発行差し止め・損害賠償
- 論点は複数あるが、本書解説は中学校の文集掲載の詩の公表権侵害について解説
判旨
- 公表権侵害を根拠とするXの請求は棄却
- プライバシー権・複製権侵害の請求は認容
- Xの詩が掲載された学年文集は300部以上配付された
- 公表は「公衆」であり「特定多数」でも成立する
- 文集掲載の詩は、すでに公表された著作物であるとした
著作権法における「公表」
著作権法における「公表」は、
- 本人の意思(許諾)により、
- 公衆(特定多数)に、
- 提供(「有体物」→原作品・複製)、提示(「無体物」→演奏・上映)された
状態となります。
上記に反しているものは「公表」されていない著作物となります。
今回の争点は、中学校の文集に掲載することは「公表」であるかという点です。Xは「公表されていない」(それがYによって公表された→侵害)とし、Yは「すでに公表されていた」と主張しました。
判決は、300部以上の複製物が配付されているのだから公表されたとしました。
ウェブディレクターの視点
普段スポーツを見ない自分でも、当時の中田英寿のスーパーヒーローっぷりは記憶にあります。え?今から20年以上も前!?うそだー。
当時、色々な雑誌で中田英寿をはじめとしたJリーガーが特集されていましたが、中田英寿はサッカー選手になる前のことを語らないポリシーがあったため、半生を勝手にまとめて出版した本件は逆鱗に触れたのだと思います。
本件書籍はこちらです。
なお本件訴訟は複数論点ありますが、他の論点も下記ページに整理されていました。
- パブリシティ権……棄却
- プライバシー権……認容
- 著作者人格権(公表権)……棄却
- 著作権(複製権)……認容
著作者人格権の侵害だけでなくパブリシティ権も棄却されています。書籍タイトルと表紙に名前や写真を使うのは、(評論という)著作物の性質上、問題ないとなりました。
ウェブディレクターとして気になる点は「公表」が「特定多数」と言う点です。例えばウェブサイトを社員限定のイントラ公開したとしても、それは著作物の「公表」となります。
今回、改めて中田英寿のWikipediaをじっくり読みました。
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