概要
- 2003年(平成15年)1月31日:東京地裁
- CADソフト「AutoCAD」で作動する電車線設計用プログラム(Xプログラム)を鉄道会社に販売するX(原告)が、類似のYプログラムを販売するYに対して、Xプログラムの著作権(複製権、翻案権、譲渡権)の侵害により、Y製品の製造・販売の差し止め・損害賠償。を請求
- 請求棄却
- プログラムは著作権の保護をうける(10条1項9号)
- 著作権は、その具体的表現を保護するものであるので、機能やアイデアを保護するものではない
- 本件はプログラムの具体的な記述が大きく相違するので請求棄却
プログラムの同一性について
裁判所のウェブサイトに判例がありました (ウェブサイトの名称が 「裁判所」ってのもすごいな…)
判例PDFより原告の主張の一部を抜き出します(改行と強調は筆者)。
原告プログラムが
「(setq V0(getreal”\n●キロ行程の最初の値をm単位で入力<0>:”))」
であるのに対して,被告プログラムが
「(setqfStartKiro(getreal”\nキロ行程の最初の値をm単位で入力<0>:”))」
であり,ほとんど同一である。(中略)
原告プログラムが
引用:裁判例結果詳細 全文PDF(https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=11333)より
「(princ”\n\n\n●キロ行程のオフセット値(スタート値から最”)」
「(setqV1(getreal”\n 初のマークまでの距離)をm単位で入力<0>:”))」
であるのに対して,被告プログラムが,
「(setq fOffsetKiro(getreal”\nキロ行程のオフセット値(スタート値から最初のマークまでの距離)をm単位で入力<0>:”))」
であり,ほとんど同一である。また,画面表示メッセージは完全に一致している。
実際のプログラムも裁判資料に添付されていました。
うーん、どうでしょう。その他にも類似を主張する部分は多数あるのですが、これを著作物として保護してしまうと、後進のプログラム開発に支障がでるような…。
判決も
「プログラムを簡潔に表記しようとすれば類似する」→「その記述に創作性はない」
「アイデアは保護しない」
として棄却しています。
ウェブディレクターの視点
「プログラムも著作物」というのは当たり前だと思いますが、簡潔に「美しく」書こうとすればするほど、記述はシンプルになり「創作性」が薄れるかと思います (著作権法に言う独創性に富んだプログラムって読みにくいだけのような)。
そうするとプログラムの著作物性って何なのでしょうか?
著作権法ではその機能やアイデアは保護されないので、革新的なアルゴリズム(発見・アイデア)であっても、プログラムの書き方を変えてしまえば(それこそ変数レベルで)、著作物としては別のものになります。プログラムの著作物性とは意外にハードルが高いのかもしれません。だからこそオープンソース文化が盛んになったのかな。
もちろんウェブサイトのHTMLソースについても著作物になりますので、他サイトのソースコードを丸々コピーして複製すると著作権侵害になります。ただ、これも、複製の過程で独自の改変が加えられると(レイアウト調整、色指定など)、著作権侵害で争うのは難しそうです。
コメント