013.建築の著作物性(グルニエ・ダイン事件)

著作権

概要

  • 2004年(平成16年)9月29日:大阪高裁
  • 大手住宅メーカーX(原告・控訴人)が建築・販売している建売住宅を、住宅メーカーYが模倣したとして著作物の複製・翻案の損害賠償と建築の差し止めを請求
  • 一審(大阪地裁)は、X建物は建築の著作物に該当しないと請求棄却
  • X控訴
    • 判決:控訴棄却
    • 応用美術(工業的に大量生産される実用品)のデザイン(意匠)は、産業の発展に寄与することを目的とした意匠法の保護対象になるべき
    • 著作権は文化の発展に寄与することを目的としている
      • ただし応用美術も著作物になりうるケースはある(鑑賞を目的とした工芸品など)
      • X建物は鑑賞するものではない
    • では「建築の著作物」にはならないのか?
      • X建物は工場で部材を製造し大量生産されるものなので建築の著作物に該当しない

建築の著作物

著作権法にも「建築の著作物」は存在している。しかし、想定されているのは、それ一品だけで、それ自体が作品のように鑑賞の対象となるもの。

「著作権法第46条(公開の美術の著作物等の利用)」における「建築の複製」は同じ建物を(設計図から再現するなど)「複製」した場合に限定され、写真撮影やオモチャを作るなどの利用は制限されていない。

グルニエ・ダインってなに??

大手住宅メーカーX(原告)とは「積水ハウス株式会社」で建売住宅は「グルニエ・ダインJXシリーズ」という商品のようです。

工業化住宅
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より自分らしさを表現できる新しいダインコンクリートの住まい「ウィズ・ダイン」 | ニュースリリース | 企業・IR・ESG・採用 | 積水ハウス
より自分らしさを表現できる新しいダインコンクリートの住まい「ウィズ・ダイン」を紹介いたします。積水ハウスの企業情報、株主・投資家情報、サスティナビリティ・ESG経営、ニュースリリース、採用情報、各種取り組み、研究開発情報をご覧いただけます。

たとえグッドデザイン賞を取得していてデザイン的に優れていようとも、建売住宅として販売しているのであれば、建築の著作物にならないという判断。

ウェブディレクターの視点

ウェブ制作で、風景の写真や建物の写真を素材として使うことがありますが、そもそも建築物が「著作物」になるにはハードルが高く、仮に「建築の著作物」になっても権利には制限があります。

  • 公開されている建築物を写真撮影して素材に使う
    • 著作権法的にはOK
    • 商用利用もOK
    • 「著作権法第46条(公開の美術の著作物等の利用)」

公開されている建物を写真撮影するには著作権(複製権)を侵害しません。ただし商標権には要注意です。建築の著作物でなくてもシルエットが商標登録されている場合は、その写真が商標権の侵害になるケースがあります。 有名な建物の外形を写真素材にする際は注意が必要です。

特に東京スカイツリーは商標に厳しいというウワサですが、いらすとやは普通にイラストが掲載されています。許諾を取ったのか、スカイツリー側が黙認しているのか…。

東京スカイツリーのイラスト
いらすとやは季節のイベント・動物・子供などのかわいいイラストが沢山見つかるフリー素材サイトです。

なお建築の著作物からミニチュアやプラモデルをつくるのも著作権でもOKです。ただ、ジグソーパズルに寺社を使って揉めたケースがあるので、こちらも注意が必要です。

平等院パズル訴訟に見る、建造物撮影写真の商用利用をコントロールするむずかしさ|知的財産・IT・人工知能・ベンチャービジネスの法律相談なら【STORIA法律事務所】

このケースでは、なんら違法行為はないことを両者で確認して和解に至ったようです

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