概要
- 2006年(平成18年)3月29日:知財高裁判決
- 写真の著作物性についての判断
- インターネットで商品の広告販売を行うX(原告)が、商品紹介写真およびテキストを、Y(被告)が無断使用したとして著作権侵害の損害賠償請求
- 地裁では、写真は正面から写しただけの平凡なものなので著作物性を否定して棄却
- 控訴
- 写真は、被写体の選択、構図、シャッターチャンス等で著作物性を持つ
- 創作性はあるが、程度により保護される範囲が異なる
- 本件は創作性は低いが、Yはその写真をそのままコピーして利用したので複製権の侵害であると認定
写真に著作物性はあるが…
- この判決では写真の著作物性には程度の差があると言っており、デッドコピー(データをコピーして掲載)だったから複製権の侵害としている
- 写真の被写体自体が著作物である場合
- その写真に創作性が付加されていれば二次的著作物になる
- 付加しなければ(ただ撮影しただけ)であれば被写体の複製物になる
本書の解説(判決への批判?)
- 創作性が低い写真に対して、デッドコピーだけが複製権の侵害と定義してしまうと、少しでも元データを改変すれば複製権の侵害は回避できる
- 一方で、それは著作者人格権における同一性保持権侵害になる
- この論理展開が成立すると、似た写真は元写真の同一性保持権の侵害とみなされ、後続の表現行為への萎縮的効果が成立するのでは?
- つまりデッドコピーは、あくまでも不当行為であるとして、不正競争防止法で解決した方がよかったのでは?
著作権の判決や解釈って、人によりブレる印象。著作権は絶対的な価値観ではないんだな。
「スメルゲット」って?
さてこの判例でテーマとなっている「スメルゲット」の「商品写真」とは?
う~ん、商品を並べて撮影した普通の写真だ…。
参考
こちらのブログ記事に、本件への興味関心から、原告へ連絡をとったことが書いてありました。
「訴訟に至る経緯や今回の事件に対する思いなどを お伺いしました」
http://ootsuka.livedoor.biz/archives/50404281.html
どうやら本人訴訟で頑張って企業を訴えていたたようです。訴訟費用が7万円くらい。他の記事には「損害賠償60万円及び慰藉料150万円」請求で、判決は「1万円の損害賠償」とあるので、金額だけ見れば損失です。ただ、自分の写真が著作物であることを認めさせた(勝手に使うな)という判決を勝ち取ったことが重要なのかなと。
ウェブディレクターの視点
ウェブサイトで見つけた出所のわからない画像をコピーしてそのまま流用することを、さすがにウェブディレクターとしてやっている人はいないと思います。
ただ、アフィリエイトやECサイトで、商品を紹介する際の写真はどうでしょう?わざわざその写真を撮影してるでしょうか。どっかに掲載されていた写真を見つけて、そのまま使ってしまうケースがあるのでは…?まさに今回の判例がそのケースです。これは複製権の侵害になりますので厳禁です。その写真の権利者(商品の販売会社など)に許諾をもらう必要があります。
なおAmazonで生成したアフィリエイトリンクにおける商品画像は利用可能です(昔は書影で揉めたこともあった記憶がありますが…Amazonの販売力の前に出版社も沈黙したのかな)。
最近、SNSでの写真転載で著作権が問題になることも多いので、写真にも著作権があることをしっかり認識しましょう。
※なので無料で使える写真サイトもあります。このブログ記事のアイキャッチ画像もここから使いました。
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