「ウェブ進化論」への23の付箋

GWの課題としていた「ウェブ進化論」を読みました。
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ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる

本を読む際、気になる箇所に付箋を張るようにしているのですが、大体がその場限りとなってしまって付箋を読み返すことはありません。
そこで今回は試験的に付箋箇所の抜き書き、それに対するコメントをブログに残してみようと思います。
たとえば下記のように。
(以下は梅田望夫 2006「ウェブ進化論」より引用。つまりネタバレ注意)

*知的生産の道具としてのブログ
対象となる情報源がネット上のものでない場合(中略)最も重要な部分だけを筆写することである。(P167)

「知的生産の道具」として著者がブログを活用している場面。この一文にヒントを得て自分でも試すことにしました。
基本的にページ順の掲載ですが内容が近いものはまとめてあります。
またこの本では重複することが何度か出てくるのですが、付箋をつけたのが必ずしも最初の登場箇所とは限りません。
ブログ掲載にあたって付箋を23枚にまとめました。
意味のないメモのようなものもありますが、小生がどのような箇所に興味を持ったか参考にしていただければと思います。

*「知の世界の秩序」再編へ
「プロフェッショナルとは何か」「プロフェッショナルを認定する権威とは誰なのか」という概念を革新するところへとつながっていく。(P16)
表現した何かを広く多くの人々に届けるという行為は、ほんのわずかな人に許された特権だった。(中略)だから、既存メディアに権威が生まれた。(P145)

→誰もが情報を発信できるウェブメディアと従来のマスメディアの比較。
「マスメディア=権威」は揺らぎつつあり、「何に掲載されたか」ではなく、その情報自体が持つ価値が重要となる(マスもウェブも情報は等価となる)。しかしそれは当たり前のことだ。

*シリコンバレーに赴任した日本企業駐在員(25歳)の発言
「米国って日本よりずっと遅れているのに、インターネットの中はすごいんですねぇ」(P20)

→米国が遅れている!?確かに平均値を見るとそうかも。

*ネット世界とリアル世界
(ネットに)「住む人」と「使ったこともない人」の間の溝は大きくなるばかりだ。(P24)

→「メールが使えない」、「ホームページが見れない」といった表層的な問題ではなく、この「ネット世界を理解できない」という「溝」こそがデジタルデバイドの本質

*気づいたときには、色々なことがもう大きく変わっていた
短兵急ではない本質的な変化だからこそ逆に、ゆっくりとだが確実に社会を変えていく。(P26)

→上記に関連して。失われた10年など言われているが、水面下では着実に社会は変化していたと思う。時間があったら1990年と2000年にあったものなかったものを調べてみよう。

*「過激な少数意見」から「時の常識」に
開発工程管理もリリース計画もないインターネット上のバーチャル大規模開発プロジェクトから、現代で最も複雑な構築物が生み出され、しかも日々進化を続けるという不思議な事実は、認知されたのである。(P33)

→オープンソースの活用が常識に。それにしてもオープンソースの行動原理は本当に不思議だ。もちろん、ただ公開すれば良いってもんじゃない。次の事例。

*MITのオープンコースウェア
マサチューセッツ工科大学の講義内容すべてをインターネット上で無償公開する巨大プロジェクト「オープンコースウェア」(中略)オープンソース・プロジェクトとは全く異なっていた。(P178)

→この事例は失敗に終わる。オープンソース成功の秘訣は参加者の高いモチベーションであり、既得権益の公開は反発を買う。しかし自社の企業秘密を公開して成功したのが後述のアマゾン。

*ネット世界の三大法則(P34)
第一法則:神の視点からの世界理解
第二法則:ネット上に作った人間の分身がカネを稼いでくれる新しい経済圏
第三法則:(≒無限大)×(≒ゼロ)=Something

1.ネット世界を俯瞰する眼(Google)
2.ポータルサイトを中心とするお金の流れ
3.話題のロングテールの件

*大組織の「よし、これからはロングテールを狙え」は間違い
ロングテールに関わりあっても固定費を賄えるだけの売り上げを生まない(P111)

ロングテールを狙っても、大企業には高い人件費の壁がある。大企業ほどプロジェクトには大人数が投入される。ウェブの世界のビジネスは中小企業こそが本領発揮か?

*IBMのパソコン事業売却の意味
付加価値が順次「あちら側」にシフトしていき、「こちら側」のモノはコモディティ(日用品)になる(P60)
電子メールは「こちら側」に置くか「あちら側」に置くか(P61)

→あらゆるデータをネットの「あちら側」においておけば「こちら側」のマシンは文字通り端末化して無価値となる。日本が誇るハードの技術も無価値に・・・。

*アマゾン島からアマゾン経済圏へ
「ユーザは別にアマゾン島に住まなくてもいいですよ。(中略)アマゾン経済圏の生活物資は(中略)ちゃんと面倒見ますから、どこに住んでも住みやすいですよ」
(中略)
アマゾンは自らの生命線とも言うべき「アマゾンが取り扱っている膨大な商品データのすべて」を、誰もが自由に使って小さなビジネスを起こせるよう、無償で公開することにしたのである。(P115)

→この一節でアマゾンのアフィリエイト戦略の意味が理解できた。自国民を増やすのではなく、領土を広げていく植民地政策。植民地の整備は行なうが、最終的な利益はアマゾンへと還流する。

ありとあらゆる言葉に対する検索結果で、アマゾンのサイトが上位を獲得できることがアマゾンの売り上げの飛躍的向上と同義となる。(P118)

→アフィリエイトにより無数にリンクを張られるアマゾンのサイト。検索サイトに商品名をいれれば上位にアマゾンが表示されるこの事実!

ヤフー・ジャパンと楽天は、(中略)自らが開発した島を開放的空間にする気はなく、相変わらず孤島の魅力を競いあうことがネット事業だと考えており(P131)

→Web1.0のままであるヤフー・ジャパンと楽天。表面的にアマゾンを真似た書店サービスを始めようが勝てるわけがない。

*ネットの「あちら側」からAPIを公開することの意味
「マイクロソフトやインテルがどんなに頑張っても、一台のコンピュータに閉じた世界で出来ることは限られている」(P124)

→ウェブサービスの破壊力。

ユーザはニュースを読んだりモノを買ったりするためにヤフー・ジャパンや楽天のサービスを使い、(中略)「サービスであると同時にプラットフォームでもある」Web2.0化を遂行し(P133)

→Web2.0のススメ。しかしプラットフォーム化は、既に多様なサービスを持ち合わせているから可能だ。そのような資本を持ち合わせない弱小は植民地化され搾取され、おこぼれを貰うだけなのか・・・?

ソーシャルネットワーキングが「巨大な人間関係マップ」を構築しているのだとすれば、そこに何を入力して何を出力させる仕組みを構想すればいいのか。(P201)

→mixiをWeb2.0化したら。

*「いや、これはおもちゃですから」
80年代にPCが世の中に登場したときも、大企業のシステム部門の人たちはこの言葉を繰り返し、一世代前の技術への莫大な投資を正当化していた。

→ウェブへの流れは一時的なものではないようだ。歴史は繰り返す。

「ふーん、そーだよねー」的な連帯(P150)

→自分の意見を再確認する。逆に言うと、認知不協和な発言は避けられ、社会心理学で言う集団極性化の効果が高まりそうだ。

*玉石混交問題の解決と自動秩序形成
検索エンジンも(中略)何もインプットがなければ、アウトプットは出せない。(中略)「多くの人が注目している」情報を自動抽出してくることができれば、(中略)「自動秩序形成システム」ができるかもしれない。(P155)
マルチマディア情報をどう整理するかは(中略)決定的なブレイクスルーが生まれていない(P157)

→これはソーシャルブックマーク、いや「はてなブックマーク」がその可能性を持っているのではないか?(取締役だけに暗に示している?)また人が探し出してくるのであれば、人を介在させることを得意とするYahoo!の出番かもしれない。

*Googleの理念
生活コストの安い英語圏の発展途上国の人々にとっては、生活コストに比して驚くほどの収入がアドセンスによってもたらされる。(中略)グーグルはこのことをもって「世界をよりよき場所にする」とか「経済的格差の是正」を目標にすると標榜する(P160)

→グーグルが世界の経済格差を解消する(w 

「才能を認め合った仲間うちだけでは完璧に情報を共有しよう」というもので、外部に対してはとても閉鎖的な会社だ。(P225)

→Googleの実態はエリート主義・・・か。

*「不特定多数は衆愚」で思考停止するな
不特定多数の「個」の行為を集積し「全体」の価値を創出する試みについて考えてきた。
(中略)
「個」が十分に分散していて、しかも多様性と独立性が担保されているとき、そんな無数の「個」の意見を集約するシステムがうまくできれば、集団としての価値判断のほうが正しくなる可能性がある。(P205)

→そのような理想的な状況はありえないだろう。現実的には、「全体」を意識せずに「個」が好き勝手にやることで「全体」の利益を生み出される。そのような仕組みが成功するのだろう。

*ウェブの進化と世代交代
物心ついたときから、インターネトや携帯電話の存在を空気のように感じて育った彼ら彼女ら。(略)2010年代にグーグルを凌駕するコンセプトと新技術を引っ提げたベンチャーが、日本から、今の日本の中学生たちから生まれる可能性は、歴史から考えても十分に「あり得る未来」なのである。(P226)

→いまの中高生の携帯文化は、我々が知らない文化だ(女子中高生の支持集め月間15億PV 無料Web「フォレストページ」)。日本のウェブの進化は今の「mixi」や「はてな」ではなく、携帯文化から生まれてくるのではないだろうか。携帯文化ならまだ日本に優位性があり!


小生は文系出身であり働いている会社もIT企業ではありません。
しかしウェブの世界は帝国列強が植民地を広げつつも、弱小なりに利益を出せる余地がありそうです。
小生ももう少しウェブの世界へのウェイトを高めていこうと思います。
ウェブの進化に喰らいついていくぞ!
・5月20日追記
長尾のブログ2.0: Webの間違った進化
ウェブ進化論への批判。論点が少しずれてる?
梅田さんもGoogleニュースやGmailについては積極的に評価していない。その枝葉の部分で議論をしても。
後半の教育のオープンソース化についても、ウェブ進化論もトップダウンによる失敗例をあげたいる。

コメント

  1. 「ウェブ進化論」は読んではいけない!!

    以前、紹介しましたけど、この、ゴールデンウィークで再読しました。その結果、この本に書かれているのは、「この情報を知らない事は恐ろしい事」だと、再確認してます。しかし、この本は万人にお勧めできる本ではありません。どんな人にお勧めできないかと言うと、1.学術書とか読むと、頭痛がする方 この本の内容は、学術書に近い硬い文章で構成されています。 私も、読み始めて勢いがついてからは、スムーズに読む事ができましたが、 それまでは、いつも使わない漢字が目に付いてかなりスローペースで読んで…

  2. ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる

    ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる梅田 望夫 筑摩書房 2006-02-07売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools
    今年21冊目。おススメ度★★★★★
    めちゃめちゃ面白いです。皆さんもぜひ読んでください!
    このブログでも紹介した『アルファブロガー』という本にすごいブログを書いている11人のひとりとして、著者の梅田さんの名前が出ていたことから、発売と同時に買って読みました。
    なんでも、5週間毎朝3時に起床し、午前中いっぱいを本書の執筆に充てただけあって、期待を裏切らない力作に仕上がっています。
    本書を読めば、?ウェブ社会が今どの様に変貌をとげつつあるのか、?その社会・経済へのインパクトはどの様なものとなるか、?グーグル、ヤフー、アマゾン、楽天の特徴と違いは何か、?ロングテール現象、Web2等キーワードの内容、等が極めて簡潔にまとめられています。
    重要なフレーズが頻繁に出てくるため、マーカーで色を塗った箇所がいっぱいになりました。今年21冊目の本書の評価は◎です。
    なお、2001年の同時多発テロに対する、いわゆる「エスタブリッシュメント」が示した反応に著者は深い失望感を抱きます。
    そして、著者はこれを契機として、自らもその階段を駆け上がり始めていた「エスタブリッシュメント」との関わりを極力減らし、「新しい自分」を模索するため、「自分(1960年生まれ)より年下の人、それも1970年以降に生まれた若い人たちと過ごす時間を積極的に作ることで次代の萌芽を考えていきたい」と生き方を変えたとの記述は印象に残りました。
    「後半生」最初の仕事として「?はてな」へ参画(同社非常勤取締役に就任)しているそうですが、日本社会の変革、才能ある若者のサポートの面での梅田氏のますますの活躍を期待したいと思います。

  3. 人類全体は信頼に足る存在

    梅田 望夫氏のウェブ進化論をフォトリーディングしました。コメント、トラバ受付中です。

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