020.映画の著作物の著作者〔宇宙戦艦ヤマト事件〕
概要
- 2002年(平成14年)3月25日:東京地裁判決
- 映画の著作権は誰のものか?
- 原告X(松本零士)は原作漫画家
- なお映画作品によっては「監督」と表記されていた
- 被告Y(西崎義展)は映画のプロデューサー
- Xは宇宙戦艦ヤマト(シリーズ8作品)の著作者は自分であると主張、Yはそれに対して雑誌等で批判
- XはYに対して著作者人格権の侵害・名誉毀損として訴訟
- Yは自分が著作者として確認する反訴
- 本訴請求棄却・反訴請求認容
- 8作品すべてについて寄与の程度を分析
- 著作者はYであってX(松本零士)ではない
- 平成15年に和解
- Yは映画の著作者
- Xは設定・デザイン・美術を担当し、絵画の著作物の著作権者
判旨
- Yは企画書の作成から映画の完成に至るまで全製作過程に関与・具体的活詳細な指示。最終決定まで
- 本件著作物の全体的形成に創作的に寄与
- Xは設定デザイン、美術、キャラクターデザインの一部の作成に関与
- ドラマ、映像および音楽から構成される本件著作物全体から見れば一部
- Xは映画の著作者にはあたらない
- ドラマ、映像および音楽から構成される本件著作物全体から見れば一部
映画の著作権って誰のもの?
色々な著作物(脚本、音楽、映像、衣装……などなど)から成り立っている映画の著作権は、その成り立ちから特殊です。
現在の著作権法が成立したときに色々と議論があったようですが「全体的形成に創作的に寄与」ということがポイントになります。映画の著作者は「全体的形成に創作的に寄与」した者がなります(いわゆる監督やプロデューサーになりますが、これに限定されません)。
そして、その著作権は映画製作者(会社など)に帰属させる(経済的利用の円滑化)ことになっています。映画で「●●製作委員会」という名称をよく見かけるのもこれです。著作者の地位と著作権の帰属を分離することで実態にあわせた円滑な運用を目指したものと思います。
なお、映画音楽・映画脚本はそれぞれ別の著作物として取り扱うものであり、映画の構成要素にはなるが、著作者にはならないという解釈になります。
あと、この判例には関係ありませんが、映画の著作物には映画を貸し出す・配る権利「頒布権」という特有の権利があります。
ウェブディレクターの視点
この判例について調べていると、このようなウェブサイトがありました。
「宇宙戦艦ヤマト」ファンサイト the nine rooms
裏話があり、事件の背景も超充実しています。判例集に記載はありませんが、 このウェブサイトによれば、この裁判の後に映画製作者である「東北新社」が著作権者としてコメントを出したようです( この裁判は「著作者」を決める争いでした )。
様々な著作物の要素から構成されるという意味ではウェブサイトも似たような気がします(テキスト・写真・デザイン・動画……)。ウェブサイト全体として著作物という判例はあるのでしょうか。引き続き判例の勉強を進めます。
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