003.表現の選択の幅「ライブドア裁判傍聴記事件」

著作権

概要

  • 2008年(平成20年)7月17日:知財高裁判決
  • 著作物とは、思想又は感情創作的に表現したものであるという判例
  • 原告Xは、ライブドア事件裁判を傍聴した記録を、傍聴記としてインターネット公開していた。
  • これが、被告Y(ヤフー(株))のYahoo!ブログ内に転載されていた(微妙に書き替え)。
    • 「Yahoo!ブログ・ライブドア被害者日記」(http://blogs.yahoo.co.jp/bachtoback/)
      • Yahoo!ブログ・サービス終了( 2019年12月15日 )で見れない。
  • Xは、Yに対してプロバイダ責任制限法による発信者の開示①と、著作権侵害で削除要請②
    • 原判決は請求棄却→控訴
    • 控訴棄却
      • 傍聴記録そのもの(書き起こし)に著作権はない

著作物の創作性について

  • 人間が文章や絵を描けば何でも著作物になる…とは限らない
    • ①知的活動ではないもの
      • (例) 毎日の温度の記録
      • 身体的労苦(「額の汗」)が保護されるわけではない
    • ②ありふれた表現
      • 簡潔な言葉や表現など
      • 事実の伝達にすぎない時事報道
        • 株式情報とか
  • 「選択の幅」という考え方(論点)
    • あるアイデアを表現する際に、どのように表現するかという選択の幅
      • どう表現しても、こうなってしまうという「選択の幅」がないものは著作物として保護されない

ウェブディレクターの視点

みんな大好きライブドアです。2006年1月早々にライブドアに東京地検特捜部の家宅捜査が入り、ITベンチャーは大騒ぎとなりました。

ライブドア事件 - Wikipedia

どのような傍聴記録だった?

どのような傍聴記録がどのように転載されていたかが重要となります。原告ブログは冒頭に記載した「 堀江貴文ライブドア事件裁判傍聴記 」から確認できます。転載ブログはYahoo!ブログのサービス終了(2019年12月15日 いつのまに!)より見れません。原告ブログを引用します。

- ライブドアの平成 16 (2004) 年 9 月期の最初の予算は、各事業部や子会社の予算案から作成されていた
  -ライブドアファイナンスによる投資事業は含んでいない
  -「売上高は 132 億円/営業利益は 22.7 億円」で、最初の予算案だからアグレッシブだった
  -「売上高は 100 ~ 110 億円/営業利益は 7 ~ 8 億円」が妥当、と感じていた
   -前年比増収増益で、実現可能な数字だった

確かに、これでは事実のメモ書きだなと感じます。これは著作物ではない(従って著作権侵害はない)と言う判決となっています。膨大な傍聴記録を箇条書きにまとめるのは、頭も使うし苦労するのはよくわかります。議事録の作成って面倒ですもんね。

しかし、そこに思想又は感情創作的に表現した形跡はありません。苦労して集めても、ただのデータは著作物にはならないということです。この傍聴記に感想や、形容詞をふんだんに入れれば良かったのだろうなとは思います。

そのとき証人は、裁判所に響き渡る声で、これが全てだとばかりに叫んだ。
「売上高は 132 億円!!営業利益は 22.7 億円!!、最初の予算案だから、アグレッシブな……ものだったッ!!」
裁判所はまるで、生物が死に絶えた深海のように静まりかえった。

苦労して集めたデータでも著作物にはならない

「苦労して集めたデータが著作物にならない」ってウェブでビジネスをする上では重要なポイントだと思います。

苦労してデータを収集し検索システムとしてサービス展開したとしても、そのデータ自体が事実の羅列だと(例えば、山の高さ、トイレの所在地、書誌情報、など)著作物性がありません。そのサービスが、クローリングされて、スクレイピングされて、データが複製されて別サービスを立ち上げられても著作権侵害には問えません (後の判例に出てきますが、不正競争防止法には問えます)。

そう言ったサービスでビジネス展開をするのであれば、データそのものよりも、検索の仕組みやデータベースに創作工夫を持たすなど、企画・設計段階で検討しておく必要があるかと思います。

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