概要
- 2015年(平成27年)12月9日:東京地裁判決
- 写真の著作物はカメラマンが著作権者になるが、その中に写っているもの(被写体・ヘアスタイル)を用意した人(ヘアドレッサー)との共同著作物になるかどうかの判例
- カメラマンA:モデルの写真を撮影
- ヘアドレッサーB:スタイリング
- 原告XはカメラマンAから著作権を譲り受けて雑誌を出版
- 被告Yはその写真を使って雑誌を出版
- ジャパン・ヘア・ドレッシング・アワーズ( Japan Hairdressing Awards )
- コンテストノミネート作品として掲載
- XがYに対して複製権の侵害の損害賠償請求
- Yは、AがXに写真の著作権譲渡した事実をあらそう
- さらに写真はAとBの共同著作物であると反論(Xの著作物ではないと主張)
- 判決:Xの請求認容
- つまり写真はX(元々カメラマンA)の著作物であり、A・Bの共同著作物であった事実はない
写真の著作物の創作性・表現
写真はカメラマンの著作物になります。カメラマンは、被写体の選択・組み合わせ・配置・構図・カメラアングル・シャッターチャンス・被写体と光線との関係・陰影・色彩・強調・トリミング・・・などなどを考慮して創作的な表現を行います。
今回のケースでは、被写体であるモデルの髪型を創作したヘアドレッサーは、写真表現の創作過程には関与していません。「何を写したか」(被写体)ではなく「どのように写したか」(撮影手法)に著作物性があるということです。
もちろん、被写体そのものが美術等の著作物になることは別の論点です(この判例は、あくまでも写真の著作物に関する損害賠償請求です)。
ウェブディレクターの視点
ウェブディレクター
ディレクター自身が写真を撮ることもありますよねー。
予算が限られている場合など、ディレクター自身が写真を撮ることも多いと思います。専用カメラでなく、スマホなどで。それでもその写真は著作物になります。
スマホをタップした瞬間、その構図を選んだ瞬間、トリミングした瞬間、カラーフィルターをかけた瞬間、これが良いんだという創作的意図があれば、その表現自体に著作物性があるということです。自然発生する著作権ってすごいですね。
なお写真の中に写り込んだ著作物や肖像権の扱いは、また別の問題であり、ディレクターが気をつけないところです。
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