概要
- ①2017年(平成29年)4月27日:東京地裁判決
- ②2017年(平成29年)10月13日:知財高裁判決
- 建築の著作物ってどこまでが範囲?
- 原告Xは建設設計会社
- 被告Y1は建築請負・設計会社(竹中工務店)
- 被告Y2は出版社
- 施工主A社が、Y1に設計・建築を依頼
- Y1は設計資料を作成
- A社は、Xに外観デザイン監修を依頼しY1資料を交付
- X社は、外観について資料と模型を提出
- 外観に立体形状の組亀甲柄でデザイン
- ただし寸法等は記載せず
- X・Y1・Aの3社で打ち合わせ。XがYとの共同設計を提案
- Y1は拒否
- Y1はAの依頼のもと、このデザイン案をさらに進めて設計・デザイン・完成
- Y1はデザイン賞に応募し2つの受賞
- 出版社Y2が著作者をY1として書籍発行
- Xは本件建物の共同著作者であるとして、
- Y1の受賞・Y2の書籍発行がXの氏名表示権の侵害と主張
- Xに氏名表示権を有することの確認とY2の書籍販売差し止め、慰謝料支払要求
- ①:どちらも請求棄却
- ②:控訴棄却
判旨
- X監修のデザイン資料と模型はアイデア提供のレベルである
- 組亀甲柄はよくあるデザイン
- それを建築として実現するための寸法等がない
- 実際の建物とも類似はしていない
- XとYが共同して創作した事実はない
- では模型と資料が原著作で建物が翻案となるのでは?
- X資料と模型自体の表現も著作物性を認めることができず
ウェブディレクターの視点
「組亀甲柄」のデザインとは文書だけではわからないので、「ステラマッカートニー青山」の検索結果はこちら。
この外装の白い組み模様が争点となっています。なお受賞した「一般社団法人 日本商環境デザイン協会(JCD)」の2015年アワードのページはこちら。
施工主の依頼でデザイン監修して「アイデア」をだした原告X。一方、施工主から建築依頼をうけていた被告Y1(竹中工務店)。
少し調べると被告Y1は、デザイン監修が別に発注されていることを知らずに打ち合わせで同席してXからプレゼンを受けたようです。Y1は資料を返却して退席したというように書かれているので、危うさを感じ取った竹中工務店が打ち合せをやめたのかな……。
アイデアは著作権で保護されないという大原則からすればこの判決は妥当なんだと思いますが、企画コンペでだした不採用の企画書の内容が、そのまま別会社に実現されたという事例も見聞きしますので複雑な気持ちです。本判例集でも、アイデアの保護について、デザイン監修として報酬・氏名表示を契約すべきとあるが、企画書だとなぁ……ブレストでアイデアだすのもためらわれてしまう。
なお、これは原告X代理人のブログがありましたので参考に。
第二東京弁護士会の資料も
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