027.著作名義(2)〔ラストメッセージin最終号事件〕

著作権

概要

  • 1995年(平成7年)12月18日:東京地裁
  • 著作者が明記されている場合でも職務著作となるか?
  • Y(被告):昭和61年~平成5年までに休刊・廃刊となった雑誌の最終号の表紙および編集部等からのコメント(以下「本件記事」)を複製して書籍として販売
    • 販売にあたって出版元200社に許諾申請したが断られた
      • 別情報によれば「許諾しない:20社」「許諾:50数社」「残り無回答」
  • X(原告):各出版元・複製権の侵害により差し止め・損害賠償請求
  • Y:本件記事の著作物性をあらそう(Xは著作権者ではない)/公正使用(フェアユース)の法理/引用として対抗

判旨

  • 東京地裁
    • 本件記事は出版元の発意により社員が作成したものなので職務著作
    • 一部の記事に執筆者名が表示されていることを理由にYはXが著作権者ではないと主張するが、出版元を代表した挨拶文である
    • ゆえに本件記事の著作者は原告Xである
    • 差し止め請求を認める

なお本裁判は以下の3点が論点です。

  1. 本件記事の著作物性
  2. 記事の職務著作の成否
  3. 公正使用(フェアユース)

本書では②だけ解説されており、①③は本書の別版を参考にとのこと。

面白い企画だが無理がある

今から30年近く前、まだまだ雑誌全盛期でしたが、それでも休刊・廃刊はありました。そしてその最終号の表紙(縮小)と終わりの挨拶(編集長コメントなど)を集めた書籍。面白い企画だ!読みたい!

しかし、どう考えても無許可で進められる企画ではなく無理がある。

職務著作の要件に
法人等が自己の著作の名義の下に公表すること」
という点があり、編集長等の名義で公表された記事は職務著作にあたらない(だからXは原告にならない)というYの主張です。

判決は、

  • 編集長は法人等の担当者としてあいさつしたにすぎない
  • 創作時点で「法人等が自己の著作の名義の下に公表すること」を「予定」していれば、誰名義で公表されていても職務著作だ

という判断になりました。

この判決がないと、最近主流となってきた新聞記者の署名記事の取り扱いが面倒になってしまいます。(新聞社の内規を知りませんが、まさか署名記事は記者の著作物にはしていないですよね)

参考情報

「印刷会社のための知的財産」(https://www.jfpi.or.jp/files/user/pdf/dta/Chizai_no15.pdf)より

なお本書籍は中古等で購入でき、その中身の一部が見れますので、どんな書籍だったか気になる方はご参照ください。

ここまではっきりと雑誌表紙と当該ページが掲載されているのであれば、雑誌表紙の複製権については争わなかったのだろうか?雑誌表紙の著作権を争いだすとAmazonなどECサイトへの掲載についても問題視しなければならなくなるのか??

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