概要・登場人物
- 2006年(平成18年)9月13日:知財高裁
- 映画製作者と著作権の帰属先の認定
- X1(原告):映像制作会社(テル・ディレクターズ・ファミリィ)
- X2:その会社の代表
- A:キャロルの専属契約レコード会社(日本フォノグラム)
- Y(被告):Aの営業譲渡により権利継承した株式会社(ユニバーサルミュージック)
- B1:キャロルのマネジメント会社
- Z:B1から営業譲渡により権利継承した有限会社
- B2:B1およびZの代表者
訴訟に至る経緯
1975年キャロルの解散コンサート
- B1(マネジメント会社)が本件業務と費用負担
- B2がプロデュース
- A(レコード会社)がライブ音源収録とLP発売
- X1(映像制作会社)はA・B1と協議の上、X2監督で映像撮影・ドキュメンタリー制作
- X1は、撮影会社Pに発注・200万円
- X1はTBSに51分版を持ち込み150万円でテレビ放送権許諾
- 調整の上、48分の映画「グッドバイ・キャロル」として放送(本件作品)
- A(レコード会社)はB2(マネジメント会社代表)からの依頼でX1に400万円支払い
- 撮影したマスターテープ+51分版をX1より受領
- Aは51分版を全国的に展開(テレビ局への放送許諾など)
編集版のビデオ・DVD販売
- 1984年A(レコード会社)はX1に依頼してA保有の本編に差し替え再編集
- 「燃えつきるキャロル・ラスト・ライブ」(本件ビデオ)制作販売
- 2003年、Aから営業譲渡を受けたY(ユニバーサルミュージック)はDVD(本件DVD)とベスト盤CD(本件CD)を発売
- Yは映像を編集して特典映像として特典DVDに収録して販売
訴訟内容・原判決
- Xは、Y(およびA)の本件ビデオ、本件DVDがX1の複製権を侵害および特典映像は翻案権の侵害、X2(監督)の著作者人格権の侵害と主張
- 原判決(東京地裁)は、著作者X2・映画製作者X1とした。
- X1からAに移転した権利(400万円支払い・51分版とマスターテープを受領)は地方番組への販売権にすぎず、著作権者はX1のままであると認定
- 損害賠償や諸々の請求は認められた
- 謝罪広告は否定
- 双方控訴
- Z(マネジメント会社Bの権利継承会社)がY側として参加
判旨
- 知財高裁
- 一部変更・一部控訴棄却
論点
- 著作者は誰か?
- X2は、監督として製作過程に関与しており著作者
- A(レコード会社)が発注・業務委託した職務著作では?
- X2が全面的に動いており、Aは関与していない。Aの指揮監督下でX2が働いたわけではない
- 映画製作者は?
- X1は、Pに対して発注、TBSに持ち込み許諾契約締結している
- 映画製作の「経済的な収入・支出の主体」である
- 著作権の譲渡について
- X1は、作品完成後にB2(マネジメント会社代表)に譲渡している
- B2は、A(レコード会社)に譲渡している
- 400万円の支払いをもってAが著作権者となった(原判決と異なる)
- よってX1の請求を棄却
権利関係がぐちゃぐちゃ
論点は、X1がA社より受け取った400万円の対価が、著作権譲渡なのか、地方番組販売権なのか(51分版とマスターテープの引き渡し)というところのようです。
知財高裁では、著作者はX2で、その著作者人格権が認められており、改変にかかる侵害が認められています。
そして著作権者は、最終的な400万円の対価でレコード会社であるAに帰属するとしました。
地裁はX1側を勝訴としていて諸々の損害賠償請求を認めていたので逆転判決となっています。
お金の授受が発生するときは著作権のうちの何を譲渡するのか契約書に明記しないといけないというお話しでした。なお著作者人格権は譲渡できないものとなります。
矢沢永吉が権利関係でトラブルがあったような話しを多々聞きますが、これも含まれるのかな。
なお関係者の社名はこちらも参考にしました。
(参考)グッドバイ・キャロル事件|セルフディフェンス講座(法律×お金×格闘技)https://note.com/treundglauben/n/n7c98bda9d35b
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