005.編集著作物の創作性「NTTタウンページ事件」

著作権

概要

  • 2000年(平成12年)3月17日:東京地裁判決
  • 編集著作物・データベースの著作物の著作権とは?
  • タウンページのデータベース(以下「DB」)は、X(原告)が作成した。職業分類を工夫している。
  • Y(被告)は、タウンページDB改訂のたびに電話番号と職業分類を取込、「業種別データ」を作成した。
    • 分類名等の変更はあったが、基本的にXとYの内容は同一
  • Xは、Yに対してDBの著作権と編集著作権の侵害として、差し止め・廃棄・損害賠償請求
  • 請求一部認容
    • 検索の利便性の観点から職業を分類、階層化した(職業分類体系)ことは、X独自の工夫が施され、類するものが他にないタウンページDBは、体系的な構成によって創作性を有する「データベースの著作物」である
    • DBの著作権の侵害である
    • さらにこれは編集著作物である
      • ただし依拠性が認められず編集著作権は侵害はしていない

データベースの著作物

  • 個々のデータそれぞれが事実だとしても、検索性や分類に創造性があればデータベース全体として著作物になる
  • 「情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するもの」
  • ただ、個々のデータを集めた労力「額の汗」は評価しない(聞き取り・ヒアリングを頑張った旨の主張は却下)
  • 類似に「自動車データベース事件」がある。こちらはデータベースの著作権は否定された。
    • タウンページDBについては、職業分類体系という創作性があったが、自動車分類体系にはないとして認められなかった(個性が発揮されない)。
    • ただ、DBを勝手に複製した不法行為に基づく損害賠償請求は認めた(不正競争防止法)

参考

データベースと著作権
J-STAGE

「日本標準産業分類」「原告の職業分類」「被告の職業分類」を3段にして,後二者が日本標準産業分類と大きく異なるものであり,かつ,原告分類と被告分類とが似ていることを,本件では表で示している

https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/55/2/55_2_125/_html/-char/ja

上記の記事はタウンページデータベース事件の担当弁護士だったようだ。訴訟時の苦労話が興味深い(XのDBで使用できない漢字を一定のルールで置きかえていたのが、そのままYのデータベースにも使われてた→複製の証跡)。

ウェブディレクターの視点

ウェブサイトでデータベースを使ったコンテンツを制作することは、よくあることだと思います(施設の検索機能など)。その際、データベースには、全体として著作権があることを認識しておく必要があります。許可無くデータベースを丸々複製すれば著作権侵害です(顧客にもDBの出所を確認する必要があるかも)。

一方、集めた情報(個々のデータ)に著作権があるわけではない点も注意が必要です。 例えば「ラーメン屋検索サービス」を立ち上げるため10万件のデータを持つ「ラーメン屋DB」を構築したとします。そのDBは「店名」「住所」「電話番号」で構成されており、それらの情報は一件、一件、苦労して聞き取りして集めました…が、このDBは著作権の保護対象にはなりません。DBを許可無く複製されて「パクリサービス」が立ち上げられても著作権侵害で訴えることはできません (不正競争防止法はいけるのかもしれませんが) 。しかし、このDBには付随情報があり、「使用する製麺所」「ダシの種類」という個性的な情報で分類していたら…ここに創作性が生まれる…かもしれません。

スクレイピングについて

では、ラーメン屋の住所情報を集めるためのプログラムを作って、機械的にラーメン屋のホームページを巡回(クロール)して住所情報テキストを集めたら?

(著作物ではない住所)データを収集するスクレイピングは著作権法的にセーフのようです。しかし、サーバ負荷などの偽計業務妨害で逮捕されたケース(その後、起訴猶予)があります(図書館情報のクローリング)。

岡崎市立中央図書館事件 - Wikipedia

なお、著作物のスクレイピングであっても、「情報解析を目的とした記録または翻案」など、テキストの機械学習目的であれば法的にOKのようです(日本著作権法47条の7/2018年の改正・画期的!らしい)。営利目的でもOK(ただし元データの販売はNG)。このあたりは最近の法改正で判例もなさそうなので、実務の際は弁護士に確認したほうが良いかと思います。

参考

改正著作権法が日本のAI開発を加速するワケ 弁護士が解説
2019年1月1日に施行予定の改正著作権法は、日本のAI開発にどのような影響を与えるのか。弁護士の柿沼太一さんが解説します。
いよいよ施行された改正著作権法は、弁護士や学者にとってビジネスチャンスとなるかもしれない|知的財産・IT・人工知能・ベンチャービジネスの法律相談なら【STORIA法律事務所】

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